父コレクション2009
先日、父が妹にむかってこんなことを言い始めたそうです。
「父さんな、ベレー帽がかぶりたい…」
反射的に
「何いってんの!?」と返してしまったそうですが、
父は
「お父さん、自信があるんだ。」
と言って聞きません。
「いいじゃん、普通のキャップとかで…」
何とか思いとどまらせたい妹は、そう説得したそうなんですが、父の決意は固かった。
「だって、そんなのみんな、かぶってるじゃないか!!」
他の人とは一線を画したい。
そんな気持ちが抑えきれなかった父は、
ついに数日後、実力行使に出てしまいました。
そう、母親と二人で買い物に行った際、見つけてしまったそうなんです。
ベレー帽…
翌日、出社する父の姿を、寝起きの妹が発見。
黒いTシャツ(拳銃のプリント)、
茶色のでかめなサングラス、
そして頭のてっぺんには、噂の黒いベレー帽…
「戦地におもむいたのか!」
そんな出で立ちに、当然ながら驚き、ベッドから起き上がろうとした瞬間、
玄関先にいた犬が激しく吠え始めました。
飼い犬でさえ、主を認識できないほどの、戦場ルックだったのです。
以上のことを、その場に居合わせなかった私に、妹が興奮めいて話してくれたのですが、
そんなこと聞いたら、見たくなってしまうじゃないですか。
「いや、明日になればきっと身につけると思うよ?」
妹は呆れ顔でそう言いましたが、
念には念をと思いまして、夕食後に一言
「お父さん、そう言えば、最近帽子買ったんだって?」
すると父は、それまで重いまぶたに負けそうな雰囲気で
椅子にもたれかかっていたのですが、突如
「そうだな」
とこぼしますと、おもむろにクローゼットに向かいました。
…!!
「あとな、もう一つ迷彩も買ったんだよ」
これより、うちの運送会社は軍隊になりました。