マキート不死身伝説
妹が飼っている犬のマキートが、自動車事故にあいました。
1カ月ぶり、4度目の出来事でした。
1度目は、だいぶ昔。
まだマキートが「少年」といった頃のこと。
飼い主である妹の運転する車から、身を乗り出して
「外部の人間、みんな敵」と、吠えまくっていたところ、
ご覧のように頭がでっかいこともあり、勢いあまってダイブしてしまったのです。
そのまま数十m、どんぐりのように転がり続け、後続車を驚かせました。
お池にはまることもなく、無事でした。
2度目は、1~2年ほど前でしょうか。
この時は、私も事件を目の当たりにしておりました。
父が車でバックする様子を、会社の窓から眺めていると…
ふいに車の後輪が、グイッと持ち上がるような動きを見せたのです。
(タイヤそのものまでは、目が届かなかった)
「あれ?」と、父と私は、車・会社の窓越しに目を合わせました。
そんなところに、大きな石などは転がっていないと知っていたからです。
「気のせいか」
なんともなしに、またバックをはじめ、ストンと車がバウンドした瞬間…
「ギャン!!」
マキートの叫び声が、日照りしている田舎の渇いた大地に響き渡りました。
父が、轢いていたのです。
しかも、タイヤ、頭を横断。
「マキートーーーーォォ!!」
家族全員で、彼の安否を確かめるべく駆け寄ると、
ちょっとハゲたオデコを隠すようにして、耳を伏せながら逃げまどうマキート…
無事でした。(ハゲ以外)
3度目は、1カ月ほど前のこと…。
母の運転するハイエースで、事件は起きました。
実家のある軽井沢にむけて、山々のカーブを好調に運転していた母。
開いている窓から顔を出す、学習能力のないマキート。
カーブとマキート、そして母のアクセルが醸し出す、絶妙なハーモニー。
それがつまり、落下でした。
しかも、何がどうしてそうなったのか、
母はまったく、そのことに気付かなかったと言います。
しばらくして、信号待ちのために停車すると…
隣りに1台の車が並んでくる。
しかも、しきりに窓を開けて話しかけようとしている。
こんな夜に。静まり返った、他に誰もいない車道で。
いぶかしげに、よーくその口元を、見てみる…
「い…う… イ…ウ… ? 犬 ? 」
犬。
あれ?うちの犬は?
…助手席に…助手席のマキートがいない!!
お礼も早々に、来た道を引き返すと、
大きな交差点の曲がり角で、木陰を背にして
トトロのように、ぽつーんと立ちつくすマキートの姿が…
無事でした。(精神面はともかく)
そして今回の4度目です。
舞台は、どこかの道路…
「どこか」なんて、唐突に曖昧なことを申しますよね。
実は、その日は祖母の33回忌ということもあり、会社がバタバタしていたんです。
その間を見計らって、マキートはプチ脱走を敢行したというわけ。
で、それが、失敗でした。
遠くからヒョウヒョウと帰ってきたマキートは、
最初、何事もなかったかのように、部屋に入った。とは、妹の弁。
そのうち、ヨシヨシと撫でていると、床に血痕が…。
「また、どっか引っ掻いたの?」
と、体を見ようとした妹の手をふりほどき、急によそよそしくなるマキート。
追いかける、妹。
父のベッドの下に、潜り込むマキート!
おかしい。追いかけるほど、おかしい。
膝をつき、ベッドの下を覗き込み、丸まった彼の体に、よくよく目をやると…
1つ、2つ、3つ、4つ…じゃ済まないほどの、脱毛箇所!
赤く滲む皮膚!!
あごの下に広がる裂傷!!!
そして3度目の事故から治りかけてきたせっかくの尻尾は、再びズルむけ!!!!
そう、おそらくですが、車道に飛び出し、道行く車の下を、
ゴロンゴロンと回転しながら轢かれまくったのです。
ベッドから引きずり出されて、家族に検分されたマキートは、
さすがに、得意のジャンプをすることもできず、ヨタヨタ。
「ついに、4度目にして…」
と、誰ともなく口にしたものでしたが、
まぁ、ようは無事でした。(注射2本)
マキート。こう見えて品種はフレンチ・ブル。
齢7歳にして、まだまだ記録を刻んでいきそうな予感。
決して、もう起こっちゃいけないんですが…