ノンタンの夢。ROUROUの夢。(その1)
4月に入った土曜日、前日まで出勤していたノンタンがアトリエに
来ませんでした。
その前の晩、彼女の送別会をささやかにやって、僕はひさびさに
結構たくさん飲んでしまったので、カラダにチカラが入りませんでした。
そしてすっかりキレイになった隣の机を見て、エイプリールフールの
ジョークだったらいいのにな、と少し寂しくなりました。
バリ行きはもともとノンタンの夢でした。
「いつか南の島で暮らす」
知り合った当時から彼女はそう言っていました。
僕 :「バリ行って何するの?」
典 :「なんか仕事する」
僕 :「なんかって、何の仕事するの?」
典 :「なんかする!」
マキ:「ヤダー!ROUROUやめないでー!」
ずっとこんな感じだったので、そんな調子で本当に夢がなかうのか?と
最初は疑問に思いましたが、
ずっと一緒に仕事をして、ハナシを聞いていくうちに、
その想いはかなり本気なんだと、いつしか感じるようになりました。
そして僕の方も、いつかその夢が叶ったらいいな、と思うようになりました。
ROUROUだって、10年前は僕とMAKIの頭の中にだけあった形のない夢だったんだから
ノンタンの夢だって、本人がその気になれば叶うかも、と思ったんです。
でも、ノンタンの夢が実現するという事は、もうすっかり僕たちとは
別の道を歩んで行くことなんだと思っていました。
ちょっと寂しいけど、それでも本気で願った彼女の夢が叶うんだったら、
しょうがないな、と思っていたんです。
(つづく…)